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岡竜之介のブログ

岡竜之介のブログです。

極限集合の解釈(イプシロンデルタ風に)

f:id:agajo:20161015111820p:plain

集合列の行き着く先

極限集合って知ってます?

極限、というと、普通は数列で

{\displaystyle
a_1, a_2, a_3, \cdots, a_n, \cdots
}

と無限に続く、その行き着く先、というイメージです。

その行き着く先を

{\displaystyle
\lim_{n \to \infty}a_n
}

と書いたりしますが〜

これに対して、集合の列

{\displaystyle
A_1,A_2,A_3,\cdots,A_n,\cdots
}

に対しても、その極限という概念があります。

集合の場合は、極限といっても2つの概念があって、それぞれ「上極限集合」「下極限集合」と呼ばれています。

なんですが〜

この「上極限集合」「下極限集合」の説明が、

まぁ〜何言ってんだか意味がわかんないんですね!!

ほら!Yahoo!知恵袋でも困ってる!

集合列の上極限集合と下極限集合の定義の意味が... - 数学 | Yahoo!知恵袋

上極限集合

僕の手元にあるこちらの本

集合と位相 (数学シリーズ)

集合と位相 (数学シリーズ)

を例に考えてみましょう。

集合列{\{E_n\}}の上極限集合の定義はこう書いてあります。

{\displaystyle
\limsup_{n \to \infty}E_n = \bigcap_{k=1}^{\infty} \bigcup_{n=k}^{\infty}E_n
}

うん。まあなんというか。

意味わかんないよね。

えっと、まず、k番目から無限番目までEnの和集合をとって?

それから、今度はkを自然数全体で動かしながらその共通部分をとる?

ん〜〜〜〜がんばってイメージしようとしてもなかなかピンときません。

この時点でピンと来る人はすごいです。僕は来なかったです。

Wikipediaにもちょっと書き方は違いますがこれが載ってます。

そして、この上極限集合について、日本語でこう説明が加えられています。

上極限集合は無限個のEnに属す元全体の集合である。

……

ん〜〜〜?????

なんかこう、わかるようなわからないような………

つまりこう、Enってのは無限個あるわけで、そのうちの無限個に属してるような元xを、全部集めた集合が、上極限集合ってことか

ん〜。ふむ。でもそれが何で

{\displaystyle
\limsup_{n \to \infty}E_n = \bigcap_{k=1}^{\infty} \bigcup_{n=k}^{\infty}E_n
}

になるのかがまたよくわからん。

下極限集合

下極限集合は、こんな感じです。

{\displaystyle
\liminf_{n \to \infty}E_n = \bigcup_{k=1}^{\infty} \bigcap_{n=k}^{\infty}E_n
}

下極限集合は有限個のEjを除いて、それ以外のすべてのEnに属す元全体の集合である。

ふむ。上極限集合と同じような感じですね…。わかるようなわからないような…。

定義を導いてみよう!

結局、この{\bigcap}とか{\bigcup}に無限がついたようなものが並んでるからわけがわからないんですよ。

ここはひとつ、定義から追ってみよう。

積集合の場合

{\bigcap_{n=k}^{\infty}E_n}という集合は、次のように書くことができます。

{\displaystyle
\bigcap_{n=k}^{\infty}E_n = \{x \mid \forall m \geqq k \ \ \  x \in E_m\}
}

意味は、「k以上のすべてのmについて、xがEmに含まれる。そんなx全体の集合」です。

ようするに、Ek, Ek+1, Ek+2, … の全部に含まれる元の集合。

つまり共通部分ですね。

和集合の場合

和集合の場合はこうです。

{\displaystyle
\bigcup_{n=k}^{\infty}E_n = \{x \mid \exists m \geqq k \ \ \  x \in E_m\}
}

意味は、「k以上のどれかしらのmについて、xがEmに含まれる。そんなx全体の集合」です。

ようするに、Ek, Ek+1, Ek+2, … のどこか1つでいいから含まれているような元の集合。

つまり和集合ですね。

極限集合の定義を書き下す!

では、いよいよ、これらを使って極限集合の定義を書き下してみましょう。

{kとかnとかmとかlとか文字}が添字として出てきますが、すべて1以上の整数に限定しますからね。

上極限集合

{\displaystyle
\limsup_{n \to \infty}E_n \\
\displaystyle = \bigcap_{k=1}^{\infty} \bigcup_{n=k}^{\infty}E_n \\
\displaystyle = \bigcap_{k=1}^{\infty} \{x \mid \exists m \geqq k \ \ \  x \in E_m\} ←和集合を定義に戻す。\\
\displaystyle = \{x \mid \forall l \ \ \  x \in \{x \mid \exists m \geqq l \ \ \ x \in E_m\}\} ←積集合を定義に戻す。\\
\displaystyle = \{x \mid \forall l \ \ \ \exists m \geqq l \ \ \  x \in E_m\}
}

最後の変形は一瞬わかりにくいですが、よく見ると

{\displaystyle
\{x \mid x \in \{ x \mid f(x)\}\}\\
=\{x \mid f(x)\}
}

という変形をしています。

意味は「『条件f(x)を満たすxの集合』に含まれる元xの集合」を「条件f(x)を満たすxの集合」に直してるだけです。

さて。

結局、上極限集合は

{\displaystyle
 \{x \mid \forall l \ \ \ \exists m \geqq l \ \ \  x \in E_m\}
}

と書き換えることが出来ました。

めちゃくちゃスッキリしましたね!

意味は、

「どんな自然数{l}を持ってきても、それ以上の{m}が存在して、xがEmに含まれる」そんなxの集合。

ようするに、どんなに添字の大きなEnを持ってきても、その先のEnたちのどこかに必ずxが含まれている、ってことです。

イプシロンデルタ論法みたいですね!

これはかなり理解しやすいんじゃないでしょうか?

さらに、この理解を得た上で、この定義式と当初の日本語を見比べて見ましょう

{\displaystyle
 \{x \mid \forall l \ \ \ \exists m \geqq l \ \ \  x \in E_m\}
}

上極限集合は無限個のEnに属す元全体の集合である。

かなり意味がわかりやすくなったと思います。

一応、この日本語と、この定義式が同じ意味を持つことを証明すると↓

(定義式→日本語)
もしxが有限個のEnにしか含まれないとすると、そのうち添え字が最大のEnを持ってくれば、それより大きな添字を持つEnにはxは含まれない。

(日本語→定義式)
それより添字が大きなEnにxが含まれないような添字mが存在するとすると、xは最大でもm個以下(有限個)のEnにしか含まれない。

下極限集合

下極限集合の場合もほとんど同じです。

{\displaystyle
\liminf_{n \to \infty}E_n \\
\displaystyle = \bigcup_{k=1}^{\infty} \bigcap_{n=k}^{\infty}E_n \\
\displaystyle = \bigcup_{k=1}^{\infty} \{x \mid \forall m \geqq k \ \ \  x \in E_m\} \\
\displaystyle = \{x \mid \exists l \ \ \  x \in \{x \mid \forall m \geqq l \ \ \ x \in E_m\}\} \\
\displaystyle = \{x \mid \exists l \ \ \ \forall m \geqq l \ \ \  x \in E_m\}
}

結局、下極限集合の定義は、こういうことになります。

{\displaystyle
 \{x \mid \exists l \ \ \ \forall m \geqq l \ \ \  x \in E_m\}
}

意味は、ある添字を持つEnをとってくると、それより大きな添字を持つEnにはずーっとxが含まれている、ということ。

これが、先程の日本語

下極限集合は有限個のEjを除いて、それ以外のすべてのEnに属す元全体の集合である。

の意味だったんですね。

並べてみると

{\displaystyle
 \limsup_{n \to \infty} E_n= \{x \mid \forall l \ \ \ \exists m \geqq l \ \ \  x \in E_m\}
}

{\displaystyle
 \liminf_{n \to \infty} E_n= \{x \mid \exists l \ \ \ \forall m \geqq l \ \ \  x \in E_m\}
}

めちゃくちゃ対称的で綺麗ですね。

極限集合

さて。

もしこの上極限集合と下極限集合が一致する場合、それを「極限集合」と呼んで

{\displaystyle
\lim_{n \to \infty} E_n
}

と書きます。う〜んシンプル。

でもこの2つ、どういう時一致してどういう時一致しないんでしょうね?

ここで、実は、次の性質が成り立ちます。

{\displaystyle \limsup_{n \to \infty} E_n \supset \liminf_{n \to \infty} E_n }

簡単に言うと、{\displaystyle\liminf_{n \to \infty} E_n}に含まれる元は、ある添字より大きな添字を持つ全てのEnに含まれてるので、当然無限個あるわけです。ということは当然{\displaystyle\limsup_{n \to \infty} E_n}にも含まる条件も満たす。OK?

ベン図で言うと、片方の◯がもう片方の◯にすっぽり収まってるわけです。

で、この2つが一致するということは、

{\displaystyle\limsup_{n \to \infty} E_n}には含まれるが{\displaystyle\liminf_{n \to \infty} E_n}には含まれないような元が、存在しなければ良い!

ベン図で言うと、外側の◯よりは内側にあって、かつ、内側の◯より外のエリアに、元が存在しないってこと。

この時、上極限集合と下極限集合は一致します。邪魔な元がいないわけですね。

では、この邪魔な元というのはどういう奴なのかというと。

まず外側の◯(上極限集合)には含まれるので、次の条件を満たします。

{\displaystyle
  \forall l \ \ \ \exists m \geqq l \ \ \  x \in E_m \tag{1}
}

そして、次の条件(下極限集合の元か満たす条件)を、満たしません。

{\displaystyle
  \exists l \ \ \ \forall m \geqq l \ \ \  x \in E_m
}

これを満たさないということは、これの否定を満たすわけです。それはどんな条件になるかというと

{\displaystyle
  \forall l \ \ \ \exists m \geqq l \ \ \   x \notin E_m \tag{2}
}

あれ。なんか、(1)と(2)は良く似ていますね。

この(1)と(2)をまとめると、こういうことになります。

{\displaystyle
  \forall l \ \ \ \exists m,n \geqq l \ \ \   x\in E_m \land x \notin E_n \tag{3}
}

どういう意味かというと、

「どんなに大きな添字lを持ってきても、それより添字が大きい集合Eの中に、xを含む奴と含まない奴がある。」

ってことです。いつまでたっても入るのか入らないのかはっきりしない奴ってことですね。

こういう奴がいると、上極限と下極限は一致せず、「極限集合」は存在しないわけです。

具体例

nが偶数のときは{\displaystyle 2 \in E_n}で、nが奇数の時は{\displaystyle 2 \notin E_n}だとします。

そうすると、この2は、いつまでたっても(どれだけ添字を大きくしても)、集合Enに含まれたり含まれなかったりするので、この時、上極限集合と下極限集合は一致しません。

2は上極限集合には含まれるけど、下極限集合に含まれないですね。

具体例2

En = [1/n,1]とします。

すると、0よりちょっとでも大きい数は、添字nを大きくするといつか必ずEnに含まれるし、

一度含まれたら、それより大きい添字nを持ってくると必ずEnに含まれます。

いつまでも入るか入らないかはっきりしないような奴はいないわけです。

すると!上極限集合と下極限集合は一致して、その極限集合は(0,1]となります。0はずっと含まれないですからね。